花冷えの春、心はあたたかく


今日は啓蟄。冬ごもりしていた虫たちが、春の気配に誘われて地上へ姿を現す頃です。校舎にも、卒業式の日の温かな記憶がまだ残っています。旅立ちの日から5日——。この場所で交わした言葉や笑顔は、卒業生たちの心の中で、新しい一歩を踏み出す力になっているはずです。

卒業アルバムには載らない、あの日だけの光景を、ここに残します。

 

「春の足音、未来への一歩」

卒業式を迎えるまでの数日間、

校内にはどこか特別な空気が流れていた。

予餞会では、在校生からの心温まるメッセージや思い出の映像に、卒業生たちが思わず笑顔になる。懐かしい場面に声をあげて笑ったり、後輩たちのパフォーマンスに感謝の拍手を送ったりする姿は、どこか安心した表情を浮かべていた。

「先輩、今までありがとうございました!」

その一言一言に込められた思いが、会場の空気をやわらかく包み込んでいた。

そして、卒業式前日。

答辞を担当する生徒が、担任の先生と最後の練習をする。

「この言葉、もう少し間を取った方が伝わるかな?」

「この部分、みんなへの感謝の気持ちを強く出したいんです。」

生徒の言葉に、先生が静かにうなずく。

「うん、大丈夫。きっと伝わるよ。」

 

練習の合間、ふと窓の外を眺めると、少し冷たい春風が吹き抜けていった。花冷えの空気の中、それでも心は不思議とあたたかい。

そのころ、初めて卒業生を送り出す担任の先生は、最後のHRの準備を進めていた。生徒一人ひとりの顔を思い浮かべながら、伝えたい言葉を何度も考える。

配布する手紙をそっと机の上に並べ、メッセージを書きながら、ふと胸が熱くなる。

「77回生のみんなが、素敵な卒業式を迎えられるように。」そう思いながら、静かに教室を見渡した。

そして迎えた卒業式当日。

会場に響く、担任の先生から呼ばれる最後の名前。その瞬間、卒業生たちはゆっくりと立ち上がり、一歩ずつ前へ進む。

答辞を読み上げる声には、前日よりもさらに強い決意がこもっていた。体育館に満ちる静寂の中で、その言葉がひとつずつ響き渡る。

式の最後、

吹奏楽部の演奏が卒業生の門出を華やかに彩る。

柔らかく響く旋律が、

会場にいるすべての人の心に深く刻まれる。

 

涙を拭いながら、

演奏に耳を傾ける卒業生たちの表情には、

それぞれの思いが詰まっていた。

退場のとき、後輩や先生方からの拍手が、

まるで祝福のシャワーのように降り注ぐ。

体育館を出ると、外の空気が頬をかすめる。

晴れ渡る空の下、卒業生たちはそれぞれの道へと進み始める。

卒業式会場の外で、駆け付けた野球部や剣道部の仲間たちが、

いつまでも惜しむように拍手を送り続ける。

名残惜しさの中、それでも歩みは止まらない。
さあ、いよいよ最後のホームルームの時間へ
将来、進むべき道を誓い、またこの仲間で再び出会えることを望んで、自分の想いを伝えていく卒業生たち。

同じクラスで、部活動も一緒だったこの大切な時間を、ともに過ごすことができてよかった。

特に二人には助けられた、ありがとう。

これからも、どこかで出会ったら、

あの時のことを思い出して、語ろう!

お父さん。お母さん。担任の先生、そしてみんな。

今まで、ありがとうございました。楽しかったです。

ここまで、大切に育ててくれてありがとう。

感謝しています。

お世話になった先生からサプライズメッセージ。

思わず、こぼれる涙

式が終わり、静かになった体育館や教室。

でも、そこで終わるわけではない。

誰かがそっと歩み寄り、最後の言葉を交わしにくる。

 

「おめでとう」と「ありがとう」の間に、

 言葉にならない想いがこぼれる。



 親しい友達、後輩、先生、そして家族。

 たくさんの立場の人が、それぞれの気持ちを抱えて 記念の花束を手にする。

渡してしまえば、それで終わってしまうような気がして、

でも、渡さないままでは前に進めなくて。



だから、泣き笑いしながら、思わず抱き合う。

「じゃあね」「元気で」「また会おう」

いつもの言葉が、今日だけは少し違って聞こえる。

自然とお世話になった先生のもとへ足を運ぶ。「先生、一緒に写真撮ってください!」

恥ずかしそうに、それでも嬉しそうに声をかける姿に、先生も笑顔で応じる。「この授業、本当に楽しかったです。ありがとうございました。」そんな言葉が、照れくささとともにこぼれる。先生は頷きながら、「こちらこそ、成長する姿を見られて嬉しかったよ」と静かに応える。

シャッターが切られるたびに、思い出がまた一つ刻まれていく。

ここには笑顔がある。



名残惜しさと、新たな門出の喜びが入り混じる瞬間。

 

泣いたあとに笑って、笑ったあとにまた涙ぐんで。



それでも、最後に残るのは、やっぱり笑顔。

そんな彼らの今を、ここに——。

 

 

 

この時間がいつまでも続くわけではないことを、

みんな知っている。



だからこそ、一つひとつの瞬間を胸に刻む。



春の風がそっと吹いて、

それぞれの未来へと背中を押していく。

 

77回生の卒業生の皆さん、

ご卒業おめでとうございます。

教職員一同、心よりお祝い申し上げます。

 

 

 

※写真は、第77回高等学校卒業式の様子